遺伝性乳がん・卵巣がん症候群の原因となるBRCA1の新規結合分子RACK1を発見
その機能の破綻による乳がんの発がんメカニズムを解明
東北大学加齢医学研究所 腫瘍生物学分野の千葉奈津子教授、吉野 優樹助教らの研究グループは、加齢ゲノム制御プロテオーム寄付研究部門安井明教授(現:加齢研フェロー)らとともに、遺伝性乳がん・卵巣がん症候群の原因になるBRCA1の新しい結合分子RACK1を同定しました。RACK1は、細胞分裂時の染色体分配に働く中心体へのBRCA1の局在を制御し、中心体の複製に機能することが分かりました。この機能異常が特に乳がんの発がんに重要であることも明らかに、BRCA1の異常が特に乳がんを引き起こす原因の一端を解明しました。
本研究成果は、Oncogene誌の掲載に先立ち、オンライン版(2019年1月7日付け)にて公開されました。
本研究は、文部科学省科学研究費補助金などの支援を受けて行われました。
【発表のポイント】
1.遺伝性乳がん・卵巣がん症候群の原因になるBRCA1の新規結合分子RACK1を同定しました。
2.RACK1は、細胞分裂の際の染色体分配に働く中心体へのBRCA1の局在を制御し、中心体の複製に機能することが分かりました。
3.BRCA1やRACK1のがん由来の遺伝子変異により中心体の複製が異常になり、がんが引き起こされることが分かりました。
図1. RACK1は細胞内の中心体*1や紡錘体極*2に局在する。
図2. RACK1の発現抑制により、BRCA1の中心体局在が異常になる。
図3. RACK1とBRCA1のそれぞれ、がん由来、遺伝性乳がん由来の遺伝子変異により、RACKとBRCA1の結合が減弱し、BRCA1の中心体局在が異常になり、中心体複製が障害され、中心体の数が異常になり、異常な細胞分裂が引き起こされ、がんの原因になると考えられる。
*1中心体: 核の近くの細胞質に存在し、細胞の分裂期には紡錘体極になる。
*2紡錘体極: 細胞分裂の際に、染色体を娘細胞に均等に分配する機能をもつ。
問い合わせ先
東北大学加齢医学研究所 腫瘍生物学分野
教授 千葉 奈津子 (ちば なつこ)
電話 022-717-8477
E-mail: natsuko.chiba.c7*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)