【発表のポイント】
⚫ 健常高齢者を対象に、グループ音楽セッション(楽器バンド演奏)の介入を実施することにより、脳の健康(全般的な認知機能・言語性記憶(注1))と心の健康(気分状態)が改善することを確認しました。
⚫ 楽器未経験の高齢者のグループ音楽セッション参加が認知・心理機能への効果をもたらすことが明らかになりました。健康寿命延伸への寄与の可能性をする成果です。

【概要】
 世界的な高齢化の進行とともに、認知症やメンタルヘルスの問題が社会的課題となっています。認知症を予防する方法の一つとして、音楽活動が挙げられます。今までの研究において楽器演奏が認知・心理機能への効果が明らかになっていましたが、楽器未経験の健常高齢者におけるグループ音楽セッションの効果についてはこれまで十分な研究が行われていませんでした。
 東北大学と株式会社池部楽器店は共同研究を行い、楽器未経験の健常高齢者を 16 週間、グループ音楽セッションに参加するグループと参加しないグループに分けて介入を実施したときの認知・心理機能への影響を調査しました。その結果、全般的な認知機能(MMSE スコア)、言語性記憶(WMS-LMⅡ スコア)、気分状態(POMS2:活気・活力スコア)が介入群において有意に改善しました (p  本研究結果は、グループ音楽セッションが健常高齢者の脳と心の健康の維持・向上に貢献する可能性を示唆しており、今後の効果的な認知症予防、健康寿命延伸のプログラム開発に期待がもたれます。
 本成果は、2025 年 2 月 10 日に科学雑誌 Frontiers in Aging にオンライン掲載されました。


図 1.
(A)グループ音楽セッション群における MMSE の改善
介入の前後(Pre-Post)において、全般的認知機能の指標である MMSE のスコアが有意に改善した。MMSE のスコアが高いほど認知機能が高いことを示す。
(B)グループ音楽セッション群における WMS-LMⅡ の改善
介入の前後(Pre-Post)において、言語性記憶の指標である WMS-LMⅡ のスコアが有意に改善した。WMS-LMⅡの スコアが高いほど認知機能が高いことを示す。
(C) グループ音楽セッション群における POMS2(活気 – 活力)の改善
介入の前後(Pre-Post)において、気分状態の活気と活力の指標である POMS2 の Vigor-Activity スコアが有意に改善した。活気 – 活力のスコアが高いほど活気・活力の気分状態が良いことを示す。

【用語説明】
注1. 耳で聞いた情報を記憶しておくこと: (言語性記憶)

詳細(プレスリリース本文)

【問い合せ先】
<研究に関すること>
東北大学
スマート・エイジング学際重点研究センター
教授 瀧 靖之
助手 品田 貴光
TEL:022-717-8582
E-mail:nmr_office*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

<報道に関すること>
東北大学加齢医学研究所 広報情報室
TEL:022-717-8443
E-mail : ida-pr-office*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)