◇ 2024年8月30日(金) 加齢研セミナーのご案内
日時: | 令和6年8月30日(金)午後4時~5時30分 |
場所: | 加齢医学研究所スマート・エイジング棟1階国際会議室 |
演題: | 間質細胞ネットワークを介する生活習慣病の病態機構 |
講師: | 武田 憲彦 |
所属: | 東京大学医学部附属病院 循環器内科 |
担当: | 本橋 ほづみ(所属 遺伝子発現制御分野/医学系研究科 医化学分野・内線8089) |
要旨: | 心臓は収縮と拡張を交互に繰り返し、ポンプとして全身に血液を駆出している。心筋梗塞などの病態では実質細胞である心筋細胞が脱落・壊死し、心臓の収縮機能が低下する。心筋組織には心筋細胞に加えて、血管内皮細胞、線維芽細胞や炎症細胞など種々の間質細胞が数多く存在する。近年、心臓の慢性炎症や心線維化など間質細胞が引き起こす疾患が注目されている。このような病態では心臓の拡張機能が特に低下し、治療抵抗性の疾患である“収縮機能の保持された心不全(HFpEF)”が引き起こされる。 我々はこれまでマクロファージなど炎症細胞が組織で活性化する分子機構を解析してきた。この中で、虚血・低酸素環境など細胞生存にとって一見不利な環境で、マクロファージがむしろ活性化することが明らかになってきた。更に解析を進める中で、低酸素環境で引き起こされる代謝リプログラミングがマクロファージ活性化に関与していることを示す知見を見出している。 虚血部位では組織圧が上昇することで、間質の物質輸送が低下するとも考えられている。我々は最近、このような部位において、マクロファージがサイトカインなどペプチドを輸送する役割を担っている可能性を見出している。一連の研究を進める中で、細胞と細胞の近接(接触)が細胞間シグナル伝達において重要な役割を果たしているとの仮説が浮かび上がってきた。本セミナーでは、現在我々が取り組んでいる近接細胞蛍光標識技術を紹介しつつ、間質細胞ネットワークが生活習慣病を引き起こす病態機構につき議論したい。 |